陰陽師 安部晴明にまつわる伝説
安部晴明の母である葛の葉は本来の姿は雌狐で、かつて晴明の父、保名に命を助けられたことから
人間に化けて保名の妻になりました。
この結婚から7年目の秋のこと、屋敷の庭にそれはみごとな菊の花が咲き乱れていました。
葛の葉はその美しさに思わずうっとりし、その場に居合わせた愛する幼い息子に気づかず、本来の姿を現してしまいます。
これにより葛の葉は人間界から立ち去らなければならなくなり、形見として2つの品を晴明に渡します。
ひとつは竜宮世界の秘符で人間世界の出来事のすべてを知ることができる四寸四方の金色の箱。
そしてもうひとつは、それを耳に当てるとあらゆる鳥獣の鳴き声を理解することができるという水晶の玉でした。
母が去って幾年は過ぎ、青年となった晴明は舞い降りてきた2羽の小さな鳥が耳元でなにやら訴えるようにさえずるのを聞きます。
急いで母の形見の水晶玉を耳に当てた晴明は驚くべき災いごとを知ることとなるのです。
天皇が大病を患っており、原因は御殿の北東の礎の下に生き埋めにされた蛇と蛙の怨念が炎となって天に
昇ったためだというものでした。
保名と晴明の親子はすぐに京へ上り、御殿に駆けつけ怨念をたちまちのうちに鎮め天皇の病を癒しました。晴明の活躍は大いに認められ、陰陽頭として昇殿を許されました。 |